倒産防止共済契約における 再加入時の掛金の損金算入の見直し

令和6年度 税制改正  倒産防止共済契約における 再加入時の掛金の損金算入の見直し


「1」 令和6年度税制改正の背景
  中小企業庁は、近年、解約手当金の支給率が100%となる加入後3年目、4年目あたりに共済契約を解約する
  傾向が特に顕著になっている一方、共済契約を解約して その後すぐに再加入する行動変容(加入者のうち
  再加入者は約16%あり、そのうち2年未満に再加入する者が約8割)が発生していることから、このような
  脱退・再加入は、積立額の変動により貸付可能額も変動することとなり、連鎖倒産への備えが不安定になるため、
  本来の共済制度利用に基づく行動とは認められないとしています。


「2」 倒産防止共済契約における再加入時の掛金の損金算入の見直し
  令和6年度税制改正において、倒産防止共済契約を令和6年10月1日以後に解除した場合、解除の日から2年間は、
  再加入時においての 共済契約に係る掛金の損金算入の特例が適用できないとする改正が行われています。

 ⑴ 中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後に
   再加入し共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する
   その共済契約に係る掛金は損金算入 又は 必要経費算入の特例が適用されないこととなりました。

 ⑵ この改正は、法人又は個人事業者の締結していた共済契約につき令和6年10月1日以後に解除があった後、
   共済契約を締結した法人又は個人事業主が当該共済契約について支出する掛金について適用されます

「改正前(令和6年9月30日以前)」
  倒産防止共済契約を解除することにより、800万円の解約手当金を受け取り、その後同事業年度内に
  共済契約の再加入を行い、240万円の掛金を前納した場合。
    益金:800万円  損金:240万円   よって、560万円に対して課税

「改正後(令和6年10月1日以後)」
  倒産防止共済契約を解除することにより、800万円の解約手当金を受け取り、その後同事業年度内に
  共済契約の再加入を行い、240万円の掛金を前納した場合
    益金:800万円  損金: 0万円   よって、800万円に対して課税



〇 中小企業倒産防止共済の概要
1、制度について
  中小企業倒産防止共済は、取引先が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で、
  無担保・無保証人で掛金の一定金額まで共済金を無利子で借入れができ、その掛金は法人の場合には
  損金の額に、個人事業者の場合は事業所得の必要経費に算入できる。

2、加入要件
  共済契約を締結することができる事業者は、一定条件に該当する中小企業者(法人・個人事業者)である。

3、掛金
⑴ 月額
  月額掛金は、5,000円から20万円までの範囲内で、5,000円ごとに設定ができ、途中で増額・減額ができる。
  ※減額の場合には、一定の理由がある場合に限る。
⑵ 限度額
  掛金総額が、800万円に達するまで掛けることができる。
⑶ 掛金の前納
  掛金は前納することができる。(上記 限度額:800万円に達するまで可能)

4、貸付制度
⑴ 共済金の貸付け
  加入後一定期間を経過し、かつ、一定期間の掛金を納付した場合において、取引先の倒産により売掛金等の回収が
  困難となったときは、一定の手続きを行うことにより、共済金の貸付けが受けることができる。
⑵ 一時貸付
  取引先に倒産が生じていなくても、臨時に事業資金を必要とする状況が生じた場合には、一定の範囲内で
  貸付けを受けることができる。

5、共済の解除
⑴ 任意解除:契約者が任意に行う解除。
⑵ 機構解除:共済契約者が12ヶ月分以上の掛金の滞納をしたときなど、一定の不適当な事由に該当するときに
       中小機構が行う解除。
⑶ みなし解除:契約者の死亡など、一定の事由に該当するときに解除されたものとみなされるもの。

6、解約手当金
  解約手当金は、共済の納付が12ヶ月以上行われた場合に支払われます。
  ※12ヶ月未満の場合は、掛け捨てとなります。
  解約手当金の額は、解除の事由 及び 掛金の納付月数に応じて、掛金累計額の75% から100% です。
  ※40ヶ月以上の納付月数により、100%となります(機構解除は除く)。

7、税務上の取扱い
⑴ 掛金
  納付した掛金は、損金の額(法人)又は 必要経費(個人事業者)に算入できます。
  ※この適用を受けるには、確定申告書等に一定事項を記載して明細書の添付が必要。

⑵ 掛金の前納
  前納の期間が1年以内のものは、その事業年度 又は その年の、損金の額 又は 必要経費に算入できます。
  1年を超えるものは 期間の経過に応じて、損金の額 又は 必要経費に算入されます。

⑶ 解約手当金
  法人が支払いを受けた解約手当金はその事業年度の益金の額に算入し、個人が支払いを受けた解約手当金は
  その年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。

2024年09月01日